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植松伸夫ダイアリーエッセイ
理恵子の
オーバーオール
不定期です。日記とは書いてあるものの每B続くわきゃない。タイトルは 『理恵子のオーバーオール」です。そのうち飽きたらタイトル変えます。文章の長さも決まってません。女性の スカートの丈のようなもんです。つまり長いときもあれば短いときもあるでしょうってことです。
FF VIIIを制作中の9/9〜1/1 8、僕は毎日サーバー上に日誌を公開していてたのた。義務感にとらわれがちな日記というモノもいざ慣れてし まうと毎日書くのが楽しみになってしまうぞ知ってたか?ところがその日記もねー、FF VIII終了と共に終焉を向かえちゃったのねー. ちょっと寂しかったのねー. でもダイジョブだ執拗なまでに僕の執筆意欲を掻き立てる新たな戦地がここに見つかったでわないか2、不定期 連載書きなぐり室長日記「理恵子のオーバーオール」の始まりじゃ!
1999/2/2
デジキューブの小沢さんの紹介でサンポーニャ奏者の瀬木さんとお会いした。にこやかなオーラをその巨漢に充 填したこの32歳の男は会った人を皆元気にしてしまう不思議なパワーの持ち主だ、5000kmのアマゾン河 カヌー下りを決行したり。単身ピグミー族の村に転がり込んでしまうそのフットワークの軽さはあの体躯からは とても想像することはできない。しかも仕事じゃなくって自腹で行くんだぜ?なんだか妙に気が合ってしまいい つか一緒に仕事をすること、いつか冒険旅行におともさせてもらうことを軽く口約束して別れたんだけど。その 帰りの車の中で僕はとても何かに満たされていたのだ。なんだか高校生の頃みたいに自分の目の前に無限の可能 性が広がっているように感じてたんだなー。夢を実現させる人の側にいると自分も夢を実現できるような気にな れるし楽しく生きてる人と一緒にいると自分も楽しくなってしまうではないか。これは何かが伝染しておるに違 いあるまい。落ち込んでる奴と話してるとこっちも滅入ってくるもんな思考なのか感情なのか難しいことはわか んないけどとにかく隣の人に伝染していくのよまあれやね、つまり、笑って生きてる人のまわりには笑って生き てる人達が集まるつちゆーこっちゃね。瀬木さん、どうもありがとう。
1999/2/8
日曜日に甥っ子、姪つ子の二人を連れてショッピングに出かけた。
FF VIIIが忙しくてここ数ヶ月会えなかったものだから。ここらでオジサンとしても点数を稼いどかないと忘れ られちゃうからな。姪っ子(10歳)の買い物は嫁さんにまかせ、僕の方は甥っ子(5歳)の担当だ。ビーダマ ンが欲しいというのでおもちゃ屋に行き「どれでも好きなの選びな」というと一つだけ選び「これがいいリとい う。
じゃあってえんでレジに向かおうとした矢先に彼の目に飛び込んできたんだね。でっかい箱の「ビーダマン4体 セット」ってのが。で、それを見つめたまんま彼はじっと動かない。
「ん?どうした?そっちがいいの?」と聞いても首を横に振る。「じゃ、行くよ」と手を引いても動かない。ど っからどう見ても「4体セット」を欲しがっているのがバレバレである。「こっちの方がいいんだったら買って あげるよ?」
「...でも...」
「でもどうした?」
「おっきいの買ってもらうとお母さんに怒られる…」
「なんて怒られるの?」
「ノビヨにお金いっぱい使わせるって…」
「ノビヨは大丈夫だよ。じゃノビヨからお母さんにいっとくから」
「…でもやっぱり怒られちゃう…」
「なんで?」『 ...もう、おもちゃばっかり買って!』って…」
「いーよ、いーよ。それもノビョからお母さんにいっとくから。タカノリが欲しがったんじゃなくってノビョが 買ってあげたかったんだって」
「ほんと?」
「うん。よっし、じゃおっきい方にするか?」
「…でも、やっぱりおっきいのは怒られちゃう」
「…う〜ん、じゃおっきい箱のはやめにしてちっこいの4つ買ってあげようか?」
「え?ほんと?」
「うん」
「それなら大丈夫だよね?だって小さい箱だからお母さんには見えないもんね」
5歳は5歳なりに知恵を働かせておるのである。ちょっと感心してしまったノピョである。
1999/3/9
観ました、観ました。昨日観てきました。あなたは観ましたか。River Dance?いやー凄かったですねえの最高の感動でしたねーん?御存知ない?じゃちょっと紹介しますと、ま 、いってしまえばアイルランドのステップダンスのショーなんですけどね。これ凄いです。本当に凄まじいです 。言葉にしちゃうのもバカバカしいのでいいません。ビデオで出てると思うんで観てください。3年前にアイル ランド行ったとき、とあるCDショップのモニターTVで発売されたばかりのRiver Danceのビデオやってたんですよ。これがショックでショックで、もう呆然と立ち尽くしたまんま涙が止ま らないんですわ。で、早速そのビデオ買って帰って何度も何度もくり返し観ながら昨日の来日公演を待っておっ たのですね、3年鳳ショーが始まりダンサー達がステップダンスを踏み始めるやいなや、またまた涙が溢れてき て、ダンサー達がみんな二重に見えちゃってんの。何度も何度もこらえようとするんだけど、やっぱあまりにも 素晴らしすぎて涙が止まらない。生きててよかった、と思ったよ。昨日は自分が生きてる同時代にこんな傑作を 作りあげた人がいて、それを生で観ることができるなんてねー。まだ観てない人いたら騙されたと思って観てく ださい。芸術と娯楽がかなり高いレベルで共存した世にも稀な作品です。。いや観てください、じゃなくって「 観るべし」だな半ば命令形だ、これは。人様にお金を払って買っていただくモノを作る人間は観な きゃダメだ. モノを作るという意味を考えさせられましたたまには反省してみます.
1999/7/8
そういえば僕はハワイに住み始めたことを記念してそれまでの下着を変えることにしたのだ。
わたしは自分の行動に責任の持てる20歳以上の成人である。[YES] [NO] ...以下、[YES]の人だけ読んでください。僕は昔からあのトランクスというのがダメだったのだ。どうもブラブラとしておさま りが悪くてしょうがないからねビチーっと押さえ付けられてる方が安心感がありますわな犬に向かって「sta y!」とか「おすわり!」とかいうでしょ?いわれた犬はじっとしてますね。ま、あれと同じ理屈で(おいおい )無意識のうちに自由な行動を束縛されることに慣れてしまったのですね。ほんの浮気心だったんですよ。初め て行ったダイエーの中を何気なく歩いていると下着売り場にいきあたった。そこにズラッとトランクスは並んで いたね。でも僕はブリーフ派。押さえ付けられてもう40年。あぁ、でもでも、このまま死んでしまえば僕は一 生トランクスの味わいを知らぬままってことになる買ってみようか?いや、いい歳こいてお前は今さら何を迷っ ているのだお前にはブリーフがお似合いだ
40年もはいてればそのくらいのことわかるだろ?うんうん。わかってはいるんだ。でも一枚くらい、ね?どう せすぐまた飽きてブリーフに帰ってくるんだから。ね?ね?一枚だけ買ってみようよ。(誰と話してんだよ)で 、一枚だけ買ったさ。そしたらあなたどーなのよ、この解放感。こちらでは常に短パンで過ごしてるものだから 短パンの裾から裾へ駆け抜けるハワイアンブリーズがいつもいつも優しくクールダウンしてくれるさ。もうやめ らんないぜ。あばよプリ一フ。40年間ありがとね。
1999/8/9
タカノリ話は続くのである。もうどうしようもなくかわいくて親馬鹿ならぬ叔父馬鹿炸裂であることは重々承知 しておるのであるが、ま、聞いてくだされ。タカノリは今夏休みということで僕の両親に連れられて姉の真実ち ゃんと4人でハワイに滞在中なのだ。僕は昼間仕事があるので朝と夜しか相手をしてあげられないのが残念だけ どね。夜になるとソファで僕と肩を組んで一緒にアニメを観るのが日課となっている。このタカノリと僕は先日 兄弟の契りを結んだ。お互いに「兄貴」「兄弟」と呼び合うことにしたんだ。ある日曜日、一緒にスーパーに買 い物に行った際、僕と兄弟は女性下着売り場に遭遇した。本能のままに行動することにおいてはこの先輝かしい 戦歴を残してくれるであろうことは疑いようのない我が兄弟は満面に笑みをたたえてこういった。「兄貴、あれ エロいよね」「...何いってんだ、兄弟。さ、行くぞ」手を引いて別の売り場に向かったのであったが後ろ髪 を下着売り場に忘れたままの兄弟は力一杯僕の手をひっぱって戻ろうとする。「ねえねえ、もう一回見に行こう よぉ」「そんなに見たいんだったら兄弟一人で見てこいよ」「ちぇっ兄貴も見たいくせに…」こんなこともある プールにやってきたビキニ姿の白人女性をだらしない顔つきで眺めていた兄弟はジャクジーに入っていた僕のと ころにかけてきて「兄貴、向こうからの方がおっぱいよく見えるよ」極めつけはこうだ。いつものように肩を組 んでTVを観ていると突然僕の股間を握り締めてこういう。「ねぇねぇ、兄貴のチン○、見せてよ」見せるかっ ちゅーの!こいつもしかして僕が彼の叔父であることを理解していないのではないか?まぁ、いーけど。別にこ っちも叔父らしいような立派な振る舞いはした試しないしな。このままいつもいつも体ベターっとくっつけてこ られてるのも悪い気はしない。
気持ちはいいもんね。子供を持つってこんな感じなんだろうか?日本への出張に出る前日ヨーヨーで遊んでいた 兄弟が聞いてきた。「いつ戻ってくるの?」「10日間くらいだよ」「うっそー、なつがーい!」そういってす ぐヨーヨーで遊びに戻っていった。ちょっと寂しかった。「えー?やだやだぁ。もっと早く帰ってきてよぉ」と 駄々こねられるのを期待してたからだ。でも翌日の出発の朝「じゃね、タカノリ、行ってくるよ」というと僕の 両足にしがみついてきて顔を太股にぴったりくっつけたままいつまでも顔をあげようとはしない…どうやらこの 恋は僕の勝ちだ。
1999/8/23
3日前から僕の旧い友人夫妻がウチに滞在しくている。書家をやっている彼が話してくれる書道の話は普段めっ たに聴けない内容であるためなかなか面白いのだ。硯の話とか、筆で書く一本の線の話とか、閉鎖的な書道界の 話とか、書のギャラの相場の話とか、う〜む硬軟取り揃えてなかなかアカデミックに夜は更けていく。「…で、 つまりそれは技術ではなくて味わいなんだよ」「はぁ…味わいねぇ…」「植松氏(彼は僕のことを昔からこう呼 ぶ)もわかるでしょ?音楽も技術だけじゃないでしょ?」「うんうん、つまり自分を表現したい気持ちが先にあ れば技術はきっと後回しになっちゃうだろうね。うんうん、それはわかるな」「技術は必要ないとはいわないよ 。もちろんモノ作りにおいて最低限の表現方法は知ってなきゃいけない」「でもそれだけを追いかけてると技術 というピースで組み上げられた作品になってしまう」「素人目には受けはいいだろうね。一見よくできてる風だ から。でも専門家の目は…」
「…ごまかせない。それは音楽も一緒だ」深夜であるにもかかわらず酒も入ることなくゲージュツトークバトル が続こうとしていた矢先、電話が鳴った。「もしもし植松です」 『あ、植松さんですかぁ?竹元ですぅ。あのね、すごいですよ。今TVのNGNチャンネルつけてみてください よ」NGNチャンネル?」「えぇ、今ね、日本のアダルトビデオが流れてますよ。すごいですね。ホラーこない だ日本のAVをテレビでやってたら教えてくれって植松さんにいわれてたじゃないですか?だから今NGNでや ってるの気付いてね早速電話してみたんです」「あ、それは御丁寧にどもども」書の話からAVまで僕の興味の ストライクゾーンはなかなか広いのである。
1999/9/1
ケーブルTVにジャズのチャンネルがあって朝から晩までジャズが流れっぱなしだ。それこそナットキングコー ルの白黒映像から名前も聞いたことのない地方のブルースメン達の演奏まで見ることができてまさに僕のための チャンネルである。嫁さんはそんなもんに興味はないので横で編み物しながら「ジャズって面白いの?」なんて たわけたことぬかしておる。僕は僕で音楽で曲がりなりにも飯を食っておる立場上。なんとか理解してもらいた いものだから「あー、これはつまりアフリカから奴隷としてアメリカに連れて来られた黒人を起源とするところ のブルースといふものが発展してだな、スウィングがビバップでクールでマイルスがアドリブなのだよ」と理屈 を説明するのだが、音楽の楽しみを理屈で説明されるほどつまらないことはない。そんなことは重々承知してお るのだ僕が思うに音楽を楽しむには今そこで流れている音楽に全面的に身を任せる必要があるのではないか。能 動的にその音楽を信頼していなければ楽しむこともできないし、理解することも難
あなたがドライブに誘われて助手席に座ったとしますね?もしその時隣でハンドルを握る愛しい彼の運転技術に 不安感を抱いてたりすると、あなたその日のドライブ楽しめますか?つまりそれと同じことなのですよ。音楽に rいい音楽」も「悪い音楽」もない。自分がそれを好きになりたいかどうかの選択でしかないわけです。いろん な音楽を聴いてそれまで自分が知らなかった様々な感動を得たいのであれば、まずその音楽に対して壁を作らな いで信じてみてください。「そこには何かがある」と確信して接してみてください。そうすると世の中の音楽が 全て自分のモノになりえます。自称「音楽を聴く天才」の僕がいってることです事実です。
1999/11/12
今年の夏頃アメリカの子供から「FFIXの音楽はNobuoの代わりにRyuichi Sakamotoというunknown composer(!)が担当すると聞いたがそれは残念なことだ」という内容のメールが届いた。訳のわから んことをいうやつだなと思っていると、どうやらその時期インターネット上で「FF9の音楽は坂本龍一に決定 !」という怪情報が流れていたらしい。まったくもってこのインターネットって奴はたちが悪い。情報源がどこ であろうと誰であろうと、その真偽に関わらずまたたくうちにその噂は世界の隅々にまで伝わってしまうのだか らね一体誰がそんな情報を流したのか?と思い、色々と検索してみたがそんなに簡単にみつかるわきゃないよな 。でもおかげであっちこっちのサイトを巡って多くの自分に関する怪し気な噂をみつけたぞ。
どうやらスクウェアがある雑誌の取材に応じ上記の坂本龍一の件を述べたらしい。どうやら僕はゲーム音楽はも うやらないといっているらしい。どうやらFF VIの頃にもスクウェアから「植松はもうゲーム音楽をやらない」というコメントがあったらしい。どうやら僕 はFF VIIIの後、スクウェアを退社したらしい。どうやらそれが原因で玲子さんと離婚したらしい。どうやら FF VIIIの音楽は面白くないらしい(これはまぁいいか…)。
どうやら僕は体を壊して療養中であるらしい。どうやら今は長年の仕事の疲れから無期限の休暇を取っているら しい。どうやらFF Xの音楽は僕が担当するらしい。あーもー!何書かれても黙ってじっと耐えるしかないのかぁ?...ま、いー けど。でもなんだかなぁ…辛いよなぁ…
1999/12/20
中学校の時の同窓生からメールが来た。結婚の早かった彼女は出産も早く、なんと娘さんが今年大学を受験する という。なんてことだ。僕の大学受験でさえ、ついこのあいだの出来事である…と思っているのはいつまでたっ ても大人になりきれない本人だけで、単純に計算してももう20年以上が経っているのだそりゃ同窓生の子供が 大学受験してもおかしかないよな。思い起こせば僕は当時、高知大学を受けて落っこちてしまったんだ。高知大 学の側に住んでいた僕等子供達にとってあのキャンパスはただの広い遊び場でしかなく、車が入ってこないのを いいことにチャリンコで競走したり勝手にプールで泳いだりしたものである卓球部のにーちゃんに卓球教えても らったり、ロックバンドの練習風景を見せてもらったりもした。あまりにも身近な存在だったものだからまさか 受験で落とされるとは思ってもいなかったのだがまともな勉強もしないで合格させてくれるほど国立大学は甘く ない。
僕の浪人生活が始まった。ま、浪人生活が始まったからといって何かが突然大きく変わるわけでもない心機一転 、勉学にいそしむ毎日が始まるのかと思いきやさにあらず。朝、予備校に行くといって家を出てしまえば後はも う楽器屋行ったりレコード屋行ったり、歩き疲れたら落ちこぼれ仲間の待つ「えるびぃ」(サ店)で一休み。全 くもっていい御身分である。しかしある時、勉強なんかしてないはずの落ちこぼれ仲間の一人であるNくんの名 前が予備校のヒットチャート(僕らは順位表のことをこう呼んでいた)の上位にくい込んでいたのである。なん と、Nくんは秘密裏に勉学にいそしんでいたのだ. いかん、いかん、これではいかん何がいかんかというと、Nくんに負けたことがいかんのだ。
中学生のときからの音楽仲間で将来は一緒にロックバンドを組むことを夢見た相方に置いていかれる。そんな気 がした僕は大いに焦り、その夏から猛烈に勉強を始めた。勉強だと思わず「これはただのゲームだ」と思い込む ことにしたのである。模擬試験で自分の順位をどこまで上げられるのかを競うゲームに過ぎないと思うことにし て頑張ったところみるみるうちに成績は上がり秋の模擬試験の結果では早慶に手が届きそうなところまで来てい た(いやマジでマジで)
具体的な志望校を決定していなかった僕は筑波大学に焦点を定めた。筑波を選んだ理由はバカバカしいから書か ないが…いやおもろいから書くけど。何かの雑誌で筑波の学生寮には学生結婚した夫婦が住んでいるという記事 を読んだからである。凄いではないか。学生結婚だぜ?思いっきり大人の世界だぜぇ。いつしか!「女の子と二 人っきり」あぁそれは「学生結婚」あぁそれは「筑波大学」という図式が出来上がり僕の受験勉強にも拍車がか かった。次の模試では筑波は合格圏内であった。「よっしゃ!学生結婚いっただきぃ!」
順調に成績もアップしていたそんな12月のある日、予備校の教室である女の子を見かけたのだ。「おいおい、 Nくん。Nくんあそこにいるあの子は一体誰かね?」「あ、Kさんね。人気あるよね。可愛いもんね」そして、 御想像通り僕は翌年の学生結婚より目前の愛欲を選んでしまうわけだ。(続く)
1999/12/21
(続き)どうもその日以来Kさんのことが気になってしかたがない。授業中でもついついKさんの姿を追ってし まうのだ。がっ!僕が彼女の姿を捉えるときには必ずといっていいほど彼女と目があってしまうのだ。つまり! 彼女も常に僕のことを見ていたのである!あぁ、神様、浪人させてくれてありがとう。ある日Kさんの友達が僕 のところにやって来て「あのね、Kさんが植松くんと話したいんだって」という。
「!」…そ、そんなぁ…いきなし「好きです」なんていわれたらどうするよで、予備校の帰りに会ったさ2:「 あ、ども、植松です。初めまして」「あの…」「…あー、はいはい」「今度、植松くんの家に遊びに行ってもい いですか?」「…げふっ!!」
それからの僕らは来る日も来る日も一日中一緒に過ごした#図書館で勉強するフリしての逢い引き (-。「逢い引き」で…)、高知城で将来の夢を熱く語るノピョ2帯屋町で手をつないで歩く二人。家に帰っても長 電話。それでも満たされることなく深夜に書き綴られる手紙...諸君、こんなことが突然自分の身に降り掛か ってみたまえ。そりゃ勉強もしなくなるって0悪いのは僕じゃないんだよ。責めるべきはこの甘美な運命なのだ よ。絵に描いた様に堕落していった二人は勉強なんか見向きもしないで毎日に酔っていたのであるが、そのうち 否応なく現実は押し寄せてくる二人がそれぞれ滑り止めとして受けていたいくつかの大学から届くのはことごと く不合格通知であったのだお互いにイライラしてきますわな。
一応この1年間この受験のために頑張ってきたんだからね。でも二人ともこの数ヶ月、緊張感の「き」の字もな く過ごしちゃったもんでもう今更受験モードには戻れない。誰が悪い?そりゃ自分に責任があるのはわかってる けどね。でも好きになっちゃつたもんしょうがないじゃんかねぇ。でも今はそんなこといってる場合じゃな〜い 。金出してくれた両親にも申し訳ないしなぁ。なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ。しかし、もうなんともし ようがない既に後の祭りだお互いになんだか気まずい思いは隠せず、会う回数も自然と減っていく「これじゃだ めだからしばらく会うのをやめようほんでもって合格したアカツキにまた会おうではないか」と約束をして最後 の筑波大学の受験に向かったのであるが...やっぱり落ちちゃいました、結局僕はお情けで入れてもらえた神 奈川大学に進学することにして、さてそろそろKさんに連絡をと思っていた矢先、彼女から手紙が届いた長い手 紙だった。要点をかいつまんで説明するとね、
* 受験がうまくいかず悩んでいたらしい。(うんうん)
* 僕からは「合格するまで会わない」といわれショックだったらしい。(わかるぞ)
* そこへアキラ君ってやつが現れ彼が色々相談にのってくれたらしい。(ん?)
* 今ではアキラ君がいないと生きていけないらしい(なんでじゃー!!)
* つきましてはこれからはお友達ということで…(ありがちぃ〜)
…あの年、僕は志望校も彼女も同時に失ってしまったんだ。予備校の先生には「お前、筑波大学じゃなくていい のか?後悔するぞ」なんていわれたんだけどなぁ、全然後悔なんてしてないぜ、島村センセ神奈川大学で大黒君 という人物に出会うのだが、彼の友人にユキちゃんという女の子がいてね。その子のバイト先がスクウェアだっ たのさ。で、僕はユキちゃんの紹介でスクウェアから音楽の仕事をもらうに至るのだ。人間どこでどうなるかわ からんねぇ、いやホント。